「最近、人の名前がすぐ出てこない」
「あれ、何を取りに来たんだっけ?」
40代、50代を過ぎると、こんなことが少しずつ増えてきます。
だからといって、すぐ認知症というわけではありません。
ただ、脳の健康を考えるなら、今からできることはあります。
そのひとつが歩くこと。
特別な運動器具はいりません。
スポーツジムに通わなくてもいい。
ぶっちゃけ、まずは散歩くらいからで十分なわけです。
脳と運動にはどんな関係があるのか。
今回は、記憶に深く関わる「海馬」を中心に、無理なく続けられる運動習慣を紹介します。

🟨 記憶に関わる「海馬」って何?
海馬は、脳の奥にある小さな部分です。
新しく経験したことを覚えたり、必要な情報を思い出したりするときに大切な役割をしています。
年齢とともに脳には少しずつ変化が起こります。
海馬もそのひとつです。
でも、「年齢を重ねたら何をしても意味がない」という話ではありません。
運動を続けることが、海馬の働きや認知機能を保つことにつながる可能性が研究されています。

🟧 運動と「BDNF」の関係
そこで出てくるのが**BDNF(脳由来神経栄養因子)**です。
名前は難しいですが、ざっくり言えば、脳の神経細胞が働きやすい環境を支える物質です。
運動によってBDNFが増えることがあり、脳の神経同士のつながりや柔軟性に関係すると考えられています。
実際、60代以上の男女120人を調べた研究では、1年間の有酸素運動を行ったグループで、海馬の一部の容積が約2%増えたと報告されています。
ただし、
「歩けば海馬が必ず若返る」
「認知症を防げる」
という意味ではありません。
ここは大事。
運動は、脳の健康を支える方法のひとつとして考えるのがちょうどいいと思います。

🟨 まずおすすめしたいのはウォーキング
「脳のために運動しよう」と言われると、
毎日走らないとダメなの?
筋トレもしないと?
となりがちですが、そこまで構えなくて大丈夫。
まずはウォーキングです。
少し息が弾むくらいの速さで歩く。
会話はできるけれど、のんびり散歩より少し速い。
それくらいを目安にしてみてください。

🟧 目標は週150分。でも最初からやらなくていい
健康づくりのひとつの目安として、
中くらいの強さの運動を週150分程度
があります。
30分なら週5日です。
とはいえ、今までほとんど歩いていなかった人が、いきなり30分を週5回。
これは、まじでしんどい。
最初は、
10分歩く。
それだけでもいいんです。
たとえば、
- 朝食のあとに10分
- 買い物で少し遠回り
- エレベーターではなく少しだけ歩く
- 夕食後に家族と散歩
- テレビを見る前に近所を一周
こんな感じ。
「運動の時間を作る」より、いつもの生活に歩く時間をくっつけるほうが続きやすいです。

🟨 歩くことは脳だけのためじゃない
ウォーキングのいいところは、脳だけを狙った運動ではないところです。
脚を使う。
心肺機能を使う。
外なら景色を見る。
道を考える。
人と話すこともある。
いろんな刺激が一度に入ります。
さらに、体力や筋力を保つことは、将来の介護予防でも大切です。
歩く機会が減る
↓
脚力が落ちる
↓
外出がおっくうになる
↓
人と会う機会まで減る
こんな流れになることもあります。
だから介護予防では、
「歩ける体をできるだけ長く保つ」
これをかなり大事にしています。

🟨 歩くときは「かかとを上げる筋肉」も働く
歩くとき、地面を後ろに蹴る瞬間があります。
このとき働く筋肉のひとつが、ふくらはぎの奥にあるヒラメ筋です。
2022年、ヒューストン大学の研究グループは、このヒラメ筋を動かす特殊な運動について調べました。
座った状態でヒラメ筋を繰り返し収縮させた実験では、食後の血糖上昇が小さくなる結果が報告されています。
ただし、この研究だけで
「ヒラメ筋を鍛えれば認知症を予防できる」
とは言えません。
そこは分けて考えたほうがいいです。
とはいえ、歩行やふくらはぎの筋肉を保つことは、日常生活を続けるうえでも大切です。

🟧 外を歩けない日は「かかと上げ」でもいい
雨の日。
暑すぎる日。
体調がいまひとつの日。
そんな日は無理して外へ出なくてもいいです。
イスやテーブルにつかまりながら、
かかとをゆっくり上げて、ゆっくり下ろす。
まず10回。
余裕があれば少し休んでもう10回。
転倒が心配な方は、座った状態でかかとを上げても構いません。
「今日は歩けなかったからゼロ」
ではなく、
「今日は家で少し動いた」
それで十分です。

🟨 高齢者は「速さ」より安全を優先
早歩きがいいと聞くと、頑張って速度を上げてしまう方もいます。
でも、高齢者の場合は安全が先です。
ふらつきがある人。
膝や腰に痛みがある人。
心臓や呼吸器の病気がある人。
こうした場合は、無理に早歩きをする必要はありません。
歩き始めて胸が痛い、強い息切れがある、めまいがするなど、いつもと違う症状が出た場合は運動を中止してください。
持病がある方や、運動を始めることに不安がある方は、医師や専門職に相談してから始めるほうが安心です。

🟨 家族は「歩きなさい」より「一緒に行こう」
親の体力低下が気になると、
「もっと歩かなあかんで」
「運動したほうがいいよ」
と言いたくなるものです。
でも、言われる側からすると、ちょっとしんどい。
そこで、
「天気いいし、ちょっと一緒に歩かへん?」
くらいでいいんです。
人は「健康のためにやらされること」より、楽しいことのほうが続きます。
公園の花を見る。
スーパーまで一緒に行く。
散歩の途中でコーヒーを飲む。
目的は何でもいい。
結果として歩いている。
これが一番続きやすい形だと思います。

🟨 続けるコツは「頑張る」より「きっかけを決める」
運動を習慣にするとき、
「明日から毎日30分歩くぞ!」
と決めても、なかなか続きません。
おすすめなのは、すでに毎日やっている行動とセットにすること。
朝ごはんを食べたら10分歩く。
夕食を食べたら家の周りを一周する。
買い物に行ったら店内を少し多めに歩く。
これなら「いつやる?」を毎回考えなくて済みます。
10分歩けたら十分。
5分の日があってもいい。
できる日に少しずつ。
その積み重ねのほうが、結局は長く続きます。

🟨 まとめ|脳のためにも、まず10分歩いてみる
もの忘れが気になったからといって、特別な脳トレばかりを探す必要はありません。
身近なウォーキングも、脳と体の健康を支える大切な習慣のひとつです。
目安としては週150分程度の中強度運動が知られています。
でも、最初からそこを目指さなくて大丈夫。
まず10分。
今日は5分でもいい。
外に出られなければ、イスに座って脚を動かすだけでもいい。
大切なのは、完璧な運動をすることではなく、動く生活を少しずつ続けることです。
脳の健康も、体力も、将来の介護予防も。
実は全部つながっています。

最近、
「前より歩くのが遅くなった気がする」
「もの忘れも少し気になってきた」
「親に運動してほしいけれど、何をすすめたらいいかわからない」
そんな段階でも大丈夫です。
Well Aging Support やわらぎでは、運動だけを押しつけるのではなく、その人の体力や生活に合わせて、無理なく続けられる健康づくりを一緒に考えています。
個人の方、ご家族、施設、地域団体からのご相談にも対応しています。
京都市周辺で介護予防や健康づくりを始めたい方も、「まだ相談するほどじゃないかな」という段階からお気軽にどうぞ。


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