「あれ」「それ」が増えた?認知症の初期に気づきたい会話の変化と家族の接し方

高齢女性と家族が会話しながら認知症の初期サインとなる言葉の変化に気づく様子 脳・認知症予防
「あれ」「それ」が増えた、同じ質問を繰り返す。認知症の初期に見られることがある会話の変化を、家族の接し方とあわせて紹介します。

「最近、お母さん。“あれ取って”“それどこ?”が増えた気がする」

「さっき聞いたことを、また聞いてるなあ」

久しぶりに親とゆっくり話したとき、こんな小さな変化に気づくことがあります。

ただ、ここでいきなり「認知症かも!」と決めつける必要はありません。

年齢を重ねれば、人の名前がすぐ出てこなかったり、言いたい言葉が喉まで出ているのに思い出せなかったりすることはあります。

大事なのは、**ひとつの失敗ではなく「以前と比べて変わったか」**を見ること。

厚生労働省の資料でも、家族が気づく認知症の初期症状として「同じことを言ったり聞いたりする」「物の名前が出てこなくなった」などが挙げられています。

普段の会話って、じつは体調を見るヒントがかなり詰まっているわけです。

会話の変化は、認知症に気づくきっかけになる

認知症というと「もの忘れ」のイメージが強いですよね。

でも脳が担っているのは記憶だけではありません。

言葉を理解する。
言いたいことを言葉にする。
話の流れを覚えておく。
相手の話を理解して返事をする。

こうした働きも脳が支えています。

アルツハイマー病などでは、記憶や理解、言葉など複数の認知機能に変化が現れることがあります。症状の出方や進み方にはかなり個人差があります。

だからこそ、

「忘れたかどうか」

だけではなく、

「話し方が前と変わっていないかな?」

と見るのも大切なんです。

「あれ」「それ」「あの人」が増えてきた

たとえば、

「冷蔵庫から、あれ取って」

「ほら、昨日来たあの人」

「紙を切るやつ、どこ?」

こんな言葉が増えることがあります。

もちろん、これだけなら誰にでもあります。

気にしたいのは、以前は普通に出ていた身近な物の名前まで出にくくなっている場合です。

厚生労働省の若年性認知症の資料でも、言葉が出にくくなり「あれ」「それ」といった代名詞が増えることが症状の一つとして紹介されています。

同じ質問を短い間に繰り返す

「明日は何時に出るの?」

「10時だよ」

数分後。

「明日は何時に出るんだっけ?」

これが何度も続く。

こんな場合は、単に聞き忘れたのではなく、聞いた内容そのものが残りにくくなっている可能性があります。

ポイントは回数より変化です。

昔から同じ話をする人なのか。

それとも最近になって明らかに増えたのか。

ここを見るほうが大事です。

話がかみ合わなくなったと感じることもある

「ちゃんと話を聞いてよ!」

家族としては、つい言いたくなる場面があります。

でも本人は聞いていないのではなく、話を理解したり、途中まで覚えておいたりすることが難しくなっている場合があります。

話の途中で最初の内容を忘れてしまえば、当然、返事もずれてしまいます。

話の途中で止まる・説明が長くなる

言いたい言葉が出てこなくなると、

「あの……ほら……」

と止まることが増えたり、

「台所で使う、四角くて、切るときに使う……」

というように、名前を言わず説明することが増える場合があります。

これも一度や二度なら普通です。

ただ、

  • 身近な物でも頻繁に名前が出ない
  • 会話が途中で何度も止まる
  • 話のつじつまが以前より合わない
  • 同じ質問がかなり増えた

こうした変化が重なるなら、一度相談してみてもいいと思います。

「昔の話ができるから大丈夫」とは限らない

これ、けっこうあります。

昔の旅行の話や子どもの頃の話は、びっくりするほど詳しい。

だから家族も、

「こんなに覚えてるんだから大丈夫やろ」

と思ってしまうんですね。

ところが認知症では、比較的新しい出来事から覚えにくくなることがあります。

昔の記憶がしっかりしていても、直前の出来事を忘れることはあります。

なので、

「昨日何を食べたか覚えているか」

みたいなテストをするより、

普段の生活全体が以前と変わっていないか

を見たほうがいいです。

独り言が増えただけでは認知症とは言えない

「独り言が増えたら認知症?」

ここは注意したいところです。

独り言は疲れや不安、習慣、寂しさなどでも増えることがあります。

独り言だけで認知症と判断することはできません。

ただ、

「最近ずっと探し物をしている」

「同じ言葉を何度も繰り返す」

「会話の変化やもの忘れも一緒に増えてきた」

など、ほかの変化も重なっているなら、その経過を少し記録しておくと相談するときに役立ちます。

家族がやってほしいのは「テスト」ではなく会話

心配になると、

「今日何日?」

「さっき何食べた?」

「この人誰かわかる?」

と確認したくなります。

気持ちはわかります。

でも、毎回テストみたいに聞かれると本人もつらい。

間違えるたびに自信をなくしてしまうかもしれません。

それより、

「最近どう?」

「今日のお昼、おいしかったね」

「昔この辺よく歩いたよね」

そんな普通の会話で十分です。

声かけは「否定しない」が基本

同じ質問をされたときも、

「さっき言ったやん!」

ではなく、

「10時だよ。紙に書いとこうか」

くらいでいい。

本人を責めるより、忘れても困りにくい環境をつくる

これも立派な介護予防だと思っています。

カレンダーに予定を書く。
薬を一か所にまとめる。
よく使う物の置き場所を決める。

こういう小さな工夫が、日々の暮らしをずいぶん楽にしてくれます。

気になる変化は1〜2週間メモしてみる

今日からできる方法としておすすめなのが「変化メモ」です。

難しく考えなくてOK。

スマホでも紙でもかまいません。

たとえば、

「同じ質問3回」

「財布を30分探していた」

「いつも使う言葉が出なかった」

こんな感じ。

毎日きっちり書かなくても大丈夫です。

気になったときだけ。

人は印象だけで判断すると、「最近ひどくなった気がする」と感じやすいものです。

メモにすると、いつから、どのくらいの頻度で起きているのかが見えます。

受診するときにも説明しやすくなります。

体を動かすことも脳の健康につながる

認知症が気になってきたからといって、脳トレだけを頑張る必要はありません。

WHOの2026年版ガイドラインでも、認知機能低下や認知症のリスクを下げるための取り組みとして、身体活動、健康的な食事、社会参加、生活習慣病の管理などが挙げられています。

まじで特別なことじゃなくていいんです。

まずは「10分動く」から

たとえば、

朝に10分歩く。

買い物で少し遠回りする。

椅子からゆっくり5回立つ。

家族と散歩する。

これくらいからで十分。

運動は脳だけではなく、足腰、心肺機能、睡眠、気分にも関わります。

そして何より、外に出るきっかけや人と話すきっかけになる

ここが大きいんですよね。

一人で黙々と完璧な運動をする必要はありません。

「ついでに動く」でいいわけさ。

急に言葉が出なくなった場合は別

ここは覚えておいてほしいところです。

昨日までは普通だったのに、

急に言葉が出ない。

急に会話が成り立たなくなった。

顔や手足の動きがおかしい。

こうした場合は、ゆっくり様子を見る場面ではありません。

脳卒中など緊急性の高い病気でも、突然言葉が出にくくなることがあります。

急な変化の場合は、早めに医療機関へ相談してください。

早めに相談することは「認知症と決めること」ではない

受診をすすめると、

「認知症扱いされたくない」

「まだそんな歳じゃない」

と抵抗されることもあります。

でも相談する目的は、認知症と決めつけることではありません。

認知機能の変化は、認知症以外の病気や体調の影響でも起こります。

厚生労働省も、認知症に似た症状にはさまざまな原因があるため、気になる場合は医師や地域包括支援センターなどへの相談を案内しています。

また現在は、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度認知症の一部を対象に、病気の進行を抑えることを目的とした治療薬も使われています。ただし対象になる条件があり、専門的な検査と判断が必要です。

早めに相談する意味は、ちゃんとあります。

まとめ|見るのは「忘れた回数」より「いつもとの違い」

「あれ」「それ」が増えた。

同じ質問をする。

言葉がなかなか出てこない。

話が途中で止まる。

これだけで認知症とは言えません。

でも、以前と比べて明らかに増えてきたなら、ひとつのサインにはなります。

大切なのは、責めることでも、家族が診断することでもありません。

普段の会話を続けながら、小さな変化に気づくこと。

そして、気になる状態が続くなら相談する。

それくらいでいいんです。

体を動かすこと、人と話すこと、しっかり食べること、眠ること。

そんな日々の積み重ねも、これからの脳と体を支える土台になります。

Well Aging Support やわらぎでは、京都市周辺で「最近、親の体力やもの忘れが少し気になってきた」という段階から、運動や毎日の生活習慣を一緒に見直すお手伝いをしています。

まだ介護が必要なわけじゃない。

だからこそ、今からできることがあります。


「こんなことで相談していいのかな?」くらいで大丈夫です。

最近、体力が落ちてきた。
親との会話が少し変わった気がする。
健康づくりを始めたいけれど、何をしたらいいかわからない。
施設や地域で介護予防の取り組みを始めたい。

個人の方、ご家族、施設、地域団体の方まで、それぞれの生活や体力に合わせて無理のない方法を一緒に考えます。

病院へ行くほどなのかわからない段階でも、健康づくりについて気軽にご相談ください。

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