脳の老化をゆるやかにするヒント|記憶力を守るために今日からできる生活習慣

脳の働きや記憶力をイメージした、頭部と脳が光っている健康イメージ画像 介護予防の基本
脳の健康は、運動・睡眠・食事・人とのつながりなど、日々の小さな習慣とも関係しています。

「最近、人の名前がすぐに出てこない」
「用事をしようと思ったのに、何をするのか忘れてしまった」

年齢を重ねると、こうした小さなもの忘れが気になることがあります。

もちろん、もの忘れがあるからといって、すぐに病気というわけではありません。
ただ、脳も体と同じように、日々の生活習慣の影響を受けています。

2025年にNature Agingという研究誌で、脳の老化に関わる可能性のある「FTL1」というタンパク質の研究が報告されました。
これはマウスを使った研究であり、人にそのまま当てはめられるものではありません。

それでも、脳の健康を考えるうえで大切なヒントがあります。
それは、脳の働きは「年齢だけ」で決まるのではなく、神経のつながりやエネルギーの状態とも深く関係しているということです。

脳の老化は「神経細胞が減るだけ」ではない

脳の老化というと、神経細胞がどんどん減っていくイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、記憶力や認知機能の低下には、神経細胞そのものだけでなく、細胞同士のつながりも関係していると考えられています。

このつながりを「シナプス」といいます。
シナプスは、脳の中で情報を受け渡しする大切な場所です。

たとえるなら、脳の中の連絡通路のようなものです。
この通路の働きが弱くなると、記憶したり、思い出したり、判断したりする力に影響が出やすくなります。

新たに注目された「FTL1」とは

今回の研究で注目されたのが、FTL1というタンパク質です。

FTL1は、鉄の管理に関わるタンパク質の一つです。
鉄は体に必要な栄養素ですが、多すぎたり、働きのバランスが乱れたりすると、細胞に負担をかけることがあります。

研究では、老齢マウスの脳の海馬という場所で、FTL1が増えていたことが報告されています。
海馬は、記憶や学習に関わる大切な部分です。

さらに、若いマウスの脳でFTL1を増やすと、記憶や学習に関わるテストの成績が低下したとされています。
一方で、老齢マウスの脳でFTL1を減らすと、記憶に関わる働きが改善した可能性が示されました。

ただし、これはあくまでマウスでの研究です。
「FTL1を減らせば人の記憶力が必ず回復する」という意味ではありません。

脳の元気には「エネルギーづくり」も大切

研究では、FTL1が増えることで、ミトコンドリアの働きが悪くなる可能性も示されました。

ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを作る場所です。
よく「細胞の発電所」と表現されます。

脳は、体の中でも多くのエネルギーを使う臓器です。
考える、覚える、体を動かす、感情を整える。
こうした働きの裏側では、たくさんのエネルギーが使われています。

つまり、脳の健康を守るためには、脳そのものだけでなく、体全体の調子を整えることも大切です。

記憶力を守るために今日からできること

ここからは、日常生活で取り入れやすい脳の健康習慣を紹介します。

1日10分でも歩く

ウォーキングは、脳の健康づくりに取り入れやすい運動です。

歩くことで血流がよくなり、脳にも酸素や栄養が届きやすくなります。
また、外の景色を見る、段差に気をつける、道を選ぶといった行動も、脳へのよい刺激になります。

最初から長く歩く必要はありません。
まずは1日10分。
慣れてきたら15分、20分と少しずつ増やしていきましょう。

膝や腰に痛みがある方は、無理をせず、室内歩行や椅子を使った運動から始めても大丈夫です。

しっかり眠る

睡眠は、脳を休ませる大切な時間です。

寝不足が続くと、集中力が落ちたり、物事を思い出しにくくなったりすることがあります。
高齢になると眠りが浅くなりやすいですが、生活リズムを整えることで改善しやすくなる場合もあります。

朝はカーテンを開けて光を浴びる。
日中に少し体を動かす。
寝る前のスマホやテレビを控えめにする。

こうした小さな工夫が、眠りの質を整える助けになります。

食事は「極端に減らさない」

脳と体のエネルギーを保つためには、食事も大切です。

特に高齢になると、食が細くなり、たんぱく質やエネルギーが不足しやすくなります。
体力が落ちると活動量が減り、脳への刺激も少なくなってしまいます。

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを、できる範囲で毎食少しずつ取り入れましょう。
「完璧な食事」を目指すより、抜きすぎないことが大切です。

鉄分やサプリメントについては、自己判断で多く摂るのはおすすめできません。
持病がある方や薬を飲んでいる方は、医師や薬剤師に相談しましょう。

人と話す機会をつくる

会話は、脳にとってとてもよい刺激になります。

相手の話を聞く。
言葉を選んで返す。
昔の出来事を思い出す。

こうしたやり取りの中で、記憶力や注意力、感情の働きが自然に使われます。

家族との短い会話でも大丈夫です。
「今日は何を食べた?」
「最近、体の調子はどう?」
「一緒に少し歩いてみる?」

何気ない声かけが、健康づくりのきっかけになります。

家族がサポートするときの声かけ

親のもの忘れや体力低下が気になると、つい「ちゃんとして」「忘れないで」と言いたくなることがあります。

でも、本人も不安を感じていることが少なくありません。

おすすめは、責める言い方ではなく、一緒に取り組む言い方です。

「最近少し歩く時間を作ってみない?」
「私も運動不足だから一緒にやろう」
「無理しない範囲で、できることを探してみよう」

このような声かけのほうが、本人も受け入れやすくなります。

介護予防では、本人の気持ちを守ることも大切です。
できないことを指摘するより、できていることを一緒に増やしていく視点が大切です。

気になる変化があるときは早めに相談を

もの忘れが少し増えた程度で、過度に心配しすぎる必要はありません。

ただし、日常生活に支障が出ている場合は注意が必要です。

同じ話を何度も繰り返す。
薬の飲み忘れが増える。
道に迷うことがある。
お金の管理が難しくなる。
急に性格や生活リズムが変わる。

このような変化がある場合は、医療機関や地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

早めに相談することで、生活の工夫や支援につながりやすくなります。

まとめ

脳の老化は、年齢だけで決まるものではありません。
神経のつながり、体のエネルギー、睡眠、運動、食事、人との関わりなど、さまざまな要素が関係しています。

今回のFTL1に関する研究は、まだマウスでの段階です。
しかし、脳の健康を守るためには、日々の生活習慣を整えることが大切だという視点を改めて教えてくれます。

大切なのは、完璧を目指すことではありません。
今日10分歩く。
いつもより少し早く寝る。
家族と一言多く話す。
食事を抜かずに食べる。

その小さな積み重ねが、これからの体と脳を支える力になります。

京都市周辺で、親の体力低下やもの忘れが気になり始めた方へ。
Well Aging Support やわらぎでは、運動だけでなく、生活習慣も含めて、無理なく続けられる健康づくりを一緒に考えます。

「何から始めたらいいかわからない」という段階でも大丈夫です。
今の体の状態や生活に合わせて、できることから整えていきましょう。


最近、体力の低下やもの忘れが少し気になってきた。
親の健康づくりをどう支えたらいいかわからない。
地域や施設で、無理なく続けられる介護予防の取り組みを始めたい。

そのようなお悩みがあれば、まだ早いかなと思う段階でもお気軽にご相談ください。

Well Aging Support やわらぎでは、個人の方、ご家族、施設、地域団体の方に向けて、体の状態や生活に合わせた健康づくり・介護予防の方法をご提案しています。

無理な運動ではなく、続けやすい方法を一緒に考えていきます。

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