「最近、人の名前がすぐに出てこない」
「親のもの忘れが増えた気がする」
このような変化があると、認知症が心配になる方もいるでしょう。
認知症は、年齢だけで決まるものではありません。運動不足、高血圧、糖尿病、喫煙、飲酒、社会的な孤立など、長年の生活習慣も関係すると考えられています。
注目されているのが、南米ボリビアで自給自足に近い暮らしを続ける先住民の研究です。
今回は、この研究から学べることと、私たちが今日から取り入れられる脳の健康習慣を紹介します。

ボリビア先住民の認知症が少なかった研究
研究では、ボリビアに暮らす60歳以上の先住民を対象に、認知機能の検査や家族への聞き取り、脳の画像検査などが行われました。
認知症が確認された割合は、チマネ族で1.2%、モセテン族で0.6%でした。どちらも世界的に見て低い水準です。
ただし、この結果だけで「昔ながらの生活をすれば認知症にならない」とは言えません。
食事、運動量、血圧、血糖、教育、社会とのつながり、生活環境、寿命など、さまざまな違いがあるためです。
「先進国に住んでいるから認知症になる」という単純な話でもありません。

昔ながらの暮らしから学べること

体を使う機会が多い
チマネ族の人たちは、歩く、畑仕事をする、舟で移動するなど、生活の中で体を動かしています。
別の研究では、高齢になっても移動する機会が多く、日常的によく移動する人ほど、方向や位置を把握する能力が良好な傾向が報告されました。
体を動かすと、脳への血流が促されます。
さらに、道を選ぶ、周囲を見る、バランスを取るといった働きも同時に使います。単純に筋肉を動かすだけでなく、脳にも複数の刺激が入るのです。

五感を使って生活している
外を歩くと、足裏で地面の状態を感じます。
目で周囲を確認し、耳で音を聞き、風や気温を肌で感じます。
これらは、見る、聞く、触れるといった感覚を脳がまとめて判断する活動です。
ただし、「感覚神経を刺激すれば認知症を予防できる」と断定できる研究結果は、現在のところ確認されていません。
大切なのは、五感だけに注目するのではなく、運動、交流、食事、睡眠、持病の管理を組み合わせることです。

今日からできる脳を刺激する5つの習慣

1.1日10分から外を歩く
最初から長時間歩く必要はありません。
まずは1日10分を目安に、自宅周辺を歩いてみましょう。慣れてきたら、10分を2回に分けても構いません。
歩くときは、ときどき周囲の景色や音にも意識を向けます。
「花が咲いている」「風が涼しい」など、気づいたことを言葉にすると、注意力や記憶も使いやすくなります。

2.いつもと少し違う道を歩く
安全な範囲で、散歩の道を少し変えてみましょう。
曲がる場所や目印を考えるため、方向感覚や判断力を使います。
迷いやすい方は、家族と一緒に歩くか、よく知っている場所から始めてください。

3.家事を小さな運動に変える
洗濯物を干す、食器を片づける、テーブルを拭くといった家事も、立派な身体活動です。
座っている時間が長い方は、30分から1時間に一度、立ち上がることから始めましょう。
転倒が心配な場合は、安定した机や椅子につかまりながら行います。

4.手と頭を同時に使う
料理、園芸、折り紙、編み物、楽器などは、手順を考えながら手を動かします。
難しいことに挑戦する必要はありません。
「野菜を一品切る」「植木に水をやる」など、慣れた活動でも十分です。
できたかどうかより、楽しんで続けられることを大切にしましょう。

5.人と話す予定をつくる
家族や友人との会話では、相手の話を聞き、内容を考え、自分の言葉で返します。
これは脳にとって複合的な活動です。
直接会うのが難しい日は、電話でも構いません。週に数回、短い会話の機会をつくるところから始めてみましょう。

高齢者が安全に始めるための注意点
体調が悪い日や、暑さが厳しい時間帯の運動は避けてください。
歩くときは、滑りにくい靴を選び、水分を持ち歩きましょう。
ふらつき、胸の痛み、強い息切れ、めまいなどが出た場合は、無理をせず中止します。
持病がある方や、転倒した経験がある方は、運動を始める前に医師やリハビリ専門職へ相談すると安心です。
もの忘れによって薬の管理や支払い、火の始末などに支障が出ている場合は、生活習慣だけで様子を見ず、医療機関や地域包括支援センターへ相談しましょう。

家族は結果より「始めたこと」を認める
家族が健康を心配するあまり、
「もっと歩かないとダメ」
「また忘れたの?」
と言ってしまうことがあります。
しかし、責められていると感じると、活動そのものを避けるようになる場合があります。
「今日は一緒に少し歩けたね」
「外の空気が気持ちよかったね」
と、行動できたことや楽しかったことに目を向けましょう。
本人が選べるように、「散歩と買い物、どちらにする?」と二つの選択肢を示す方法もおすすめです。

まとめ
ボリビア先住民の認知症有病率が低かったことは事実ですが、その理由が身体活動や感覚神経だけにあるとは断定できません。
それでも、体を動かすこと、人と話すこと、考えながら手を使うことは、脳と体の健康を支える大切な習慣です。
世界保健機関も、身体活動、社会参加、認知的な活動、禁煙、飲酒量の見直し、高血圧や糖尿病などの管理を勧めています。
大がかりな脳トレを始めなくても大丈夫です。
まずは、いつもの生活に「10分歩く」「一品料理する」「誰かと話す」のどれか一つを加えてみましょう。
毎日完璧に行うより、できる日に少しずつ続けることが大切です。

健康づくりは、「まだ相談するほどではない」と感じている時期から始めて構いません。
「最近、体力やもの忘れが少し気になる」
「親にどのような運動を勧めたらよいかわからない」
「地域や施設で介護予防の取り組みを始めたい」
Well Aging Support やわらぎでは、個人、ご家族、施設、地域団体の状況に合わせ、運動だけでなく生活習慣も含めた無理のない方法を一緒に考えます。
京都市周辺で介護予防や健康づくりを始めたい方も、まずは気軽にお話しください。


コメント