「最近、歩くのが遅くなった気がする」
「小さな段差でつまずくことが増えた」
「親の歩き方が、前より小さくなった気がする」
このような変化は、年齢のせいだけではありません。
体の衰えが、歩き方に少しずつ表れているサインかもしれません。
特に注目したいのが「歩幅」です。
歩幅とは、歩くときの一歩の大きさのことです。
歩幅が狭くなると、足が前に出にくくなり、段差につまずきやすくなります。
転倒は、骨折や入院、要介護につながることもあるため、早めに気づいて整えていくことが大切です。

65〜75歳の10年間は、これからの体づくりの分かれ道
人生100年時代といわれる今、大切なのは「長く生きること」だけではありません。
できるだけ長く、自分の足で歩き、行きたい場所へ行けることです。
厚生労働省の資料では、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳です。
一方で、健康上の問題で日常生活が制限されずに過ごせる健康寿命は、男性72.57歳、女性75.45歳とされています。
つまり、人生の最後の約9年から12年ほどは、何らかの手助けが必要になる可能性があります。
だからこそ、65〜75歳の10年間はとても大切です。
この時期に、歩く力、立ち上がる力、バランスを保つ力を少しずつ守っておくことが、75歳以降の暮らしやすさにつながります。
もちろん、75歳を過ぎてからでも遅すぎることはありません。
体は、今できることから始めることで少しずつ応えてくれます。

転倒は「寝たきり」の入口になることがある
転倒というと、大きな事故を想像する方もいるかもしれません。
しかし、高齢者の転倒は、家の中や近所の道など、日常生活の中で起こることが少なくありません。
たとえば、次のような場面です。

・玄関の段差でつまずく
・布団やカーペットの端に足が引っかかる
・何もない場所でふらつく
・階段の下りでバランスを崩す
・夜中にトイレへ行く途中で転ぶ
厚生労働省の2022年の調査では、介護が必要となった主な原因の中で「骨折・転倒」は上位に入っています。
一度転んで骨折すると、入院や手術をきっかけに体力が落ちることがあります。
さらに「また転んだら怖い」と感じて外出を控えると、筋力が落ち、さらに転びやすくなることもあります。
この悪循環を防ぐためには、転んでから考えるのではなく、転びにくい体を日頃から作ることが大切です。
意外な指標は「歩幅」

転倒予防で見落とされやすいのが、歩幅です。
歩幅が狭くなる背景には、いくつかの体の変化があります。
太ももやお尻の筋力が弱くなる

足を前に出す力、体を支える力が弱くなると、一歩が小さくなります。
歩くときに足が上がりにくくなり、つまずきやすくなります。
股関節や足首が硬くなる

関節が硬くなると、足を前に出す動きが小さくなります。
特に足首が硬いと、段差を越えるときに足先が引っかかりやすくなります。
姿勢が前かがみになる

背中が丸くなり、目線が下がると、歩幅は自然と小さくなります。
前かがみの姿勢では、バランスも崩しやすくなります。
バランス感覚が低下する

片足で体を支える時間が短くなると、歩く動きが小さくなります。
その結果、すり足のような歩き方になり、転倒リスクが高まりやすくなります。
今日からできる歩幅チェック
まずは、自分の歩幅を確認してみましょう。
難しい道具は必要ありません。

10歩チェック

- 平らで安全な場所を選ぶ
- 普段どおりの歩き方で10歩歩く
- スタートから10歩目までの距離を測る
- 距離を10で割る
これで、おおよその歩幅がわかります。
大切なのは、他の人と比べることではありません。
以前の自分と比べて、歩幅が小さくなっていないかを見ることです。
スマホの歩数計やウォーキング記録を使っている方は、歩く速さや歩数の変化も参考になります。
歩幅を守るための簡単トレーニング
無理に大股で歩く必要はありません。
まずは、安全にできる範囲で、足を前に出す力を育てていきましょう。

イスからの立ち上がり
足腰の力を守る基本運動です。
やり方は簡単です。

- イスに浅く座る
- 足を肩幅に開く
- 手すりや机に軽く手を添える
- ゆっくり立ち上がる
- ゆっくり座る
目安は5回から10回です。
慣れてきたら、1日2セットを目標にしましょう。
かかと上げ

ふくらはぎを使うことで、歩くときのけり出しを助けます。
- イスの背もたれや壁に手を添える
- 両足で立つ
- かかとをゆっくり上げる
- ゆっくり下ろす
目安は10回です。
ふらつく方は、必ず支えを使ってください。
その場足踏み

足を上げる感覚を取り戻す運動です。
- イスや壁の近くに立つ
- 片足ずつ、ゆっくり足踏みする
- つま先を少し上げる意識を持つ
目安は30秒から1分です。
テレビを見ながらでもできます。
普段の歩き方で意識したいこと
歩幅を広げようとして、急に大きく歩く必要はありません。
まずは「少しだけ前へ」を意識しましょう。
おすすめは、いつもの歩幅より半歩だけ前に出すイメージです。
背すじを軽く伸ばし、目線を少し前に向けるだけでも歩き方は変わります。
ただし、痛みがあるときやふらつくときは無理をしないでください。
ひざ、腰、股関節に痛みがある場合は、医師や理学療法士など専門職に相談しましょう。

家族がサポートするときの声かけ
家族が気づいたときは、責める言い方をしないことが大切です。
「歩き方が悪くなったね」
「もっとちゃんと歩いて」
このような言葉は、本人の不安を強くしてしまうことがあります。
おすすめは、安心できる声かけです。
「一緒に少し歩いてみようか」
「最近つまずきやすい場所がないか、一緒に見てみよう」
「無理しなくていいから、5分だけ体を動かしてみよう」
人は、責められると動きにくくなります。
でも、一緒にやる形なら始めやすくなります。

無理なく続けるコツ
運動は、毎日完璧にやろうとすると続きにくくなります。
大切なのは、生活の中に小さく入れることです。

たとえば、
・歯みがきの後に、かかと上げを10回
・テレビの前で、足踏みを30秒
・買い物の帰りに、少しだけ遠回り
・階段では手すりを使い、ゆっくり上り下り
・週に1回だけ、歩幅チェックをする
このくらいで大丈夫です。
「できる日に、できる分だけ」で続けていきましょう。
まとめ
転倒を防ぐために大切なのは、特別な運動だけではありません。
毎日の歩き方、歩幅、立ち上がり、足の上がり方に気づくことです。
歩幅は、体の衰えを教えてくれるわかりやすいサインです。
歩幅が小さくなってきたと感じたら、今日から少しずつ足腰を整えていきましょう。
65〜75歳の10年間は、これからの暮らしを支える大切な準備期間です。
そして、75歳を過ぎてからでも遅くありません。
自分の足で歩ける時間を少しでも長くすることは、外出の楽しみ、家族との時間、自分らしい暮らしを守ることにつながります。

最近、体力の低下や歩き方の変化が気になる方へ。
親の転倒予防をどう支えたらいいかわからない方へ。
地域や施設で、無理なく続けられる介護予防の取り組みを始めたい方へ。
Well Aging Support やわらぎでは、運動だけでなく、生活習慣や日常動作も含めて、その方に合った健康づくりを一緒に考えます。
「まだ早いかな」と思う段階でも大丈夫です。
小さな不安のうちに、気軽にご相談ください。


コメント