「最近、疲れやすくなった」
「歯ぐきから血が出る」
「テレビの音が大きくなった」
「本の文字が読みづらい」
年齢を重ねると、このような変化を「年のせいだから」と済ませてしまうことがあります。
しかし、貧血や歯周病、視力低下、難聴などは、体だけでなく、脳の健康や日常生活にも関係する可能性があります。
もちろん、これらの症状があるからといって、必ず認知症になるわけではありません。
大切なのは、小さな変化に早めに気づき、必要な検査や治療を受けながら、今の生活をできるだけ保つことです。

小さな体調不良が脳に関係するといわれる理由
脳は、酸素や栄養をたくさん必要とする臓器です。
また、見る、聞く、話す、歩く、食べるといった日常の活動によって、常に刺激を受けています。
ところが、体調不良によって外出や会話が減ると、脳が刺激を受ける機会も少なくなります。
たとえば、目が見えにくくなって読書をやめたり、耳が聞こえにくくなって人との会話を避けたりすることがあります。
こうした生活の変化が重なると、社会的な孤立や運動不足につながり、認知機能にも影響する可能性があります。
2024年に発表された国際的な認知症予防の報告では、難聴に加えて、治療されていない視力低下も認知症のリスク要因として挙げられました。

貧血と認知機能の関係

貧血とはどのような状態?
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが少なくなり、体に酸素を運ぶ力が低下した状態です。
主な症状には、次のようなものがあります。
・疲れやすい
・息切れがする
・動悸がする
・顔色が悪い
・立ちくらみがする
・頭が重い
・集中しにくい
貧血がある人では、貧血がない人より認知機能低下のリスクが高かったという研究報告があります。
2021年に公表された研究のまとめでは、貧血がある人は、認知機能障害を起こすリスクが約1.39倍高いという関連が示されました。
また、2026年にスウェーデンの高齢者を対象として発表された研究でも、鉄の不足と認知症リスクとの関連が報告されています。
ただし、これらは「貧血が認知症を直接起こす」と証明したものではありません。

自己判断で鉄分を取らないことが大切
貧血の原因は鉄分不足だけではありません。
ビタミンB12や葉酸の不足、消化管からの出血、腎臓病、慢性的な炎症、薬の影響などでも起こります。
そのため、サプリメントを自己判断で飲むよりも、まず血液検査で原因を確認することが大切です。
疲れや息切れが続く場合は、内科などに相談しましょう。
急な息苦しさ、胸の痛み、強い動悸、意識が遠のく感じがある場合は、早めの受診が必要です。

歯周病と脳の健康の関係
歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こる病気です。
初期には痛みが少なく、気づかないまま進むことがあります。
歯周病と認知機能については、慢性的な炎症や歯の喪失、かむ力の低下などを通して関連する可能性が研究されています。
2024年の研究のまとめでは、歯周病と認知機能低下、認知症発症との間に関連が認められました。
一方、2025年に発表された別の追跡研究では、歯周病そのものと認知症発症との明確な関連は確認されず、自分の歯を保つことが認知機能を守る可能性が示されました。
つまり、研究結果はまだ完全には一致していません。
それでも、歯周病を予防し、食事をしっかりかめる状態を保つことは、栄養や会話、生活の質を守るために大切です。

今日からできる口のケア
歯みがきは、朝と寝る前を基本に行いましょう。
特に寝ている間は口の中が乾きやすいため、寝る前の歯みがきが重要です。
歯と歯の間には、歯間ブラシやデンタルフロスも役立ちます。
次のような変化がある場合は、歯科医院に相談しましょう。
・歯ぐきから血が出る
・歯ぐきが腫れている
・口臭が強くなった
・歯がぐらつく
・かみにくくなった
・入れ歯が合わなくなった
歯科健診の間隔は口の状態によって異なります。一般的には、歯科医師や歯科衛生士と相談し、3~6か月ごとなど、自分に合った間隔を決めましょう。

視力や聴力の低下も見逃さない
目や耳の変化は、単に「見えにくい」「聞こえにくい」という問題だけではありません。
外出、読書、テレビ、趣味、人との会話などにも影響します。
結果として、家に閉じこもる時間が増えたり、人付き合いが減ったりすることがあります。

目の変化を確認する
次のような場合は、眼科での検査を考えましょう。
・文字がかすむ
・片目だけ見えにくい
・物が二重に見える
・暗い場所で見えにくい
・眼鏡が合わなくなった
・段差につまずきやすくなった
眼鏡を調整したり、白内障などの治療を受けたりすることで、活動しやすくなる場合があります。

耳の変化を確認する
次のような変化も見逃さないようにしましょう。
・テレビの音量が以前より大きい
・聞き返しが増えた
・複数人の会話が聞き取りにくい
・後ろから呼ばれても気づかない
・電話での会話が難しい
聞こえにくさがある場合は、耳鼻咽喉科で原因を確認することが大切です。
耳あかが詰まっているだけの場合もあれば、治療や補聴器の調整が必要な場合もあります。

今日から始める「小さな変化」の確認習慣
毎日、体の状態を細かく記録する必要はありません。
週に1回程度、次の5項目を振り返ってみましょう。
- 疲れや息切れが増えていないか
- 歯ぐきから出血していないか
- 食事をしっかりかめているか
- 見えにくさや聞こえにくさがないか
- 外出や人との会話が減っていないか
カレンダーや手帳に、気になる項目を一言だけ書いておく方法もおすすめです。
「息切れあり」「歯ぐき出血」「テレビ音量アップ」など、短い記録で十分です。
変化が2週間以上続く場合や、少しずつ悪化している場合は、医療機関や歯科医院に相談しましょう。

高齢者を家族が支えるときの声かけ
家族が「病院に行ったほうがいい」「耳が遠くなった」と強く言うと、本人は責められているように感じることがあります。
次のような声かけがおすすめです。
「最近、少し疲れやすそうだけど大丈夫?」
「一度調べてもらうと安心できそうだね」
「私も一緒に行こうか?」
「聞こえやすくなったら、会話ももっと楽になりそうだね」
できていないことを指摘するのではなく、今の生活を楽にするために確認する、という伝え方が大切です。

まとめ
貧血、歯周病、視力低下、難聴があるからといって、必ず認知症になるわけではありません。
しかし、酸素不足や慢性的な炎症、外出・会話の減少などを通して、認知機能と関係する可能性が研究されています。
大切なのは、必要以上に怖がることではありません。
「いつもと少し違う」と感じたときに放置せず、検査や治療につなげることです。
歯をみがく。
聞こえ方を確認する。
眼鏡を調整する。
疲れが続けば血液検査を受ける。
こうした小さな行動も、これからの生活を守る介護予防の一つです。

Well Aging Support やわらぎでは、運動だけでなく、食事、外出、生活習慣、人とのつながりなども含めて、無理なく続けられる健康づくりを一緒に考えています。
京都市周辺で介護予防を始めたい方や、親の体力低下、もの忘れ、外出機会の減少が気になる方も、気軽にご相談ください。
「まだ相談するほどではないかも」と感じる段階でも大丈夫です。
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