「油は体に悪そうだから、なるべく控えたほうがいい」
そう思っている方も多いかもしれません。
しかし、油は細胞やホルモンをつくる材料になり、私たちの体に欠かせない栄養素です。大切なのは、油を完全に避けることではありません。
種類と量を意識し、普段使っている油と上手に置き換えることです。
近年は、オリーブオイルやアマニ油などに含まれる成分と、認知機能や炎症との関係も研究されています。ただし、油を取るだけで認知症や老化を防げるわけではありません。
現在わかっていることと、日常生活での取り入れ方を見ていきましょう。

食用油は脳や体に必要な栄養素
油に含まれる脂質は、体を動かすエネルギー源になるだけではありません。
脳や神経、細胞膜をつくる材料になり、脂溶性ビタミンの吸収も助けています。
一方で、油は少量でもエネルギー量が多いため、健康に良いとされる油でも、使いすぎれば体重増加につながる可能性があります。
世界保健機関は、脂質の「量」だけでなく「質」も重要であり、飽和脂肪酸を植物油などの不飽和脂肪酸に置き換えることを勧めています。
ポイントは、健康に良い油を今の食事へ追加するのではなく、バターや脂身、使いすぎている調理油の一部と置き換えることです。

オリーブオイルと認知機能の関係

注目されているオレオカンタールとは
エキストラバージンオリーブオイルには、オレオカンタールなどのポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールとは、植物に含まれる抗酸化成分です。体内の炎症や酸化による負担を抑える可能性が研究されています。
オリーブオイルを取り入れた地中海食と認知機能を調べた研究では、高齢者の認知機能を支える可能性が報告されています。
また、軽度認知障害のある25人を対象にした6か月間の小規模研究でも、エキストラバージンオリーブオイルを摂取したグループに認知機能などの変化が報告されました。
ただし、研究人数は少なく、オレオカンタールだけの効果と断定することはできません。最新の研究レビューでも、効果の確実性はまだ低く、より大規模な研究が必要とされています。

日常での取り入れ方
オリーブオイルは、次のような料理に使いやすい油です。
- サラダや温野菜に小さじ1杯程度かける
- 炒め物に使う
- 納豆や冷ややっこへ少量加える
- パンに薄くつける
健康効果を期待して大量に飲む必要はありません。普段使っている油の一部を置き換えるところから始めましょう。

アマニ油に含まれるオメガ3脂肪酸

脳と炎症との関係が研究されている
アマニ油には、オメガ3脂肪酸の一種である「α-リノレン酸」が多く含まれています。
α-リノレン酸は体内でつくることができないため、食事から取る必要があります。
健康な高齢者などを対象にした研究では、α-リノレン酸を1日2.2グラム含むアマニ油を12週間摂取したところ、言葉を思い出して話す力に関係する検査で改善が報告されました。
ただし、認知症を予防できると確認されたわけではありません。炎症や血圧などへの影響も研究されていますが、対象者や健康状態によって結果は異なります。

加熱せずに使うのが基本
アマニ油は熱や光、空気の影響を受けやすい油です。
次のように、料理が完成してから加えましょう。
- ヨーグルトに小さじ1杯
- 納豆や冷ややっこに少量
- みそ汁を器に入れてから加える
- ドレッシングに混ぜる
α-リノレン酸の量は商品によって異なります。容器の栄養表示と保存方法を確認してください。
開封後は冷蔵庫で保管し、表示された期間内に使い切りましょう。

ごま油は香りを生かして少量使う
ごま油には、セサミンやセサモールなどの成分が含まれています。
これらには、抗酸化作用や炎症との関係が研究されています。がん細胞への作用を調べた研究もありますが、現在の中心は細胞実験や動物実験です。
そのため、ごま油を食べれば、がんを予防できるとは確認されていません。
ごま油のよいところは、少量でも料理の香りや満足感を高めやすい点です。
きんぴら、ナムル、スープ、冷ややっこなどに、数滴から小さじ1杯程度加えると、塩分を増やしすぎずに風味を足しやすくなります。

3種類の油を無理なく使い分ける方法
すべての油を毎日使う必要はありません。
例えば、次のように使い分けると続けやすくなります。

朝

ヨーグルトや納豆にアマニ油を小さじ1杯程度加える。
昼

サラダや温野菜にオリーブオイルを使う。
夜

炒め物やあえ物の仕上げに、ごま油を少量加える。
油を「足す」のではなく、その日に使う油の中で種類を選ぶことが大切です。
目につく場所に油を並べておく、使う料理をあらかじめ一つ決めておくなど、迷わなくても実行できる環境をつくると習慣化しやすくなります。
高齢者が取り入れるときの注意点
胃腸が弱い方は、油を急に増やすと胃もたれや下痢が起こることがあります。まずは数滴から小さじ1杯程度で様子を見ましょう。
体重を減らす必要がある方や、医師から脂質を制限されている方は、自己判断で量を増やさないでください。
また、油は薬ではありません。
もの忘れが急に増えた、同じ話を何度も繰り返す、支払いや服薬の管理が難しくなったなど、生活に影響する変化がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
家族が勧めるときは、
「健康にいいから毎日食べて」
ではなく、
「いつもの料理に少し試してみようか」
と声をかけると、本人の負担になりにくくなります。

まとめ
オリーブオイルやアマニ油、ごま油には、脳や体の健康との関係が研究されている成分が含まれています。
ただし、特定の油だけで認知症や老化、がんを防げるわけではありません。
大切なのは、油の種類だけに頼らず、野菜や魚、大豆製品を含む食事、適度な運動、睡眠、人との交流を組み合わせることです。
まずは、普段使っている油の一部を置き換えることから始めてみましょう。毎日完璧に続けなくても大丈夫です。できる日の小さな選択が、将来の健康を支える習慣につながります。

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