「最近、同じ話が増えた気がする」
「約束を忘れることが多くなった」
「でも、本人は普通に生活できている」
家族としては心配だけれど、どこまで声をかけてよいのか迷うことがあります。
もの忘れが増えたからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。
ただし、日常生活に大きな支障が出る前の段階で気づくことは、とても大切です。
特に「MCI」と呼ばれる軽度認知障害の段階では、生活習慣の見直しや運動、医療機関への相談によって、認知機能の低下をゆるやかにできる可能性があります。
大切なのは、本人を責めることではありません。
「心配しているよ」と伝えながら、早めに相談できる環境をつくることです。

MCIとは、認知症の一歩手前の状態
MCIとは「軽度認知障害」のことです。
記憶力や注意力などに少し低下が見られるものの、日常生活はおおむね自立して送れている状態をいいます。
たとえば、次のような変化が見られることがあります。
・約束の日時を間違える
・同じ話を何度もする
・探し物が増える
・買い物で同じ物を何度も買う
・料理や家事に時間がかかる
・外出や人付き合いが減る
ただし、MCIは認知症そのものではありません。
すべての人が認知症に進むわけでもありません。
だからこそ、早く気づいて生活を整えることが大切です。

放っておくと困りごとが増える可能性
もの忘れを「年のせい」と決めつけて放っておくと、生活の中で小さな困りごとが増えることがあります。
たとえば、薬の飲み忘れ、火の消し忘れ、予定の混乱、外出への不安などです。
また、失敗を責められることで本人が自信をなくし、外に出る機会が減ることもあります。
外出や会話が減ると、体力や気分にも影響します。
体を動かす機会が減ると、足腰の筋力低下や転倒リスクにもつながります。
認知機能と体力は、別々のものではありません。
歩く、話す、食べる、眠る。
こうした毎日の生活そのものが、脳の健康を支えています。

早期受診が大切な理由
早めに受診する目的は、認知症と決めつけることではありません。
本当に認知症なのか。
薬や病気の影響はないか。
睡眠不足、栄養不足、うつ状態、脱水、生活習慣病などが関係していないか。
こうしたことを確認するためにも、医療機関への相談は大切です。
相談先としては、もの忘れ外来、認知症外来、脳神経内科、精神科、脳神経外科などがあります。
迷う場合は、まずかかりつけ医に相談してもよいでしょう。
地域包括支援センターも、高齢者や家族の相談窓口として利用できます。

「何でもなかったら安心」も大切な結果
受診をすすめるとき、家族はつい「認知症かもしれないから病院に行こう」と言ってしまいがちです。
しかし、この言い方だと本人は傷つきやすくなります。
おすすめは、病名を前面に出さないことです。
「最近少し疲れているように見えるから、一度体のチェックをしてもらおう」
「薬や睡眠の影響もあるかもしれないから、先生に相談してみよう」
「何でもなかったら安心できるし、私も一緒に行くよ」
このように伝えると、本人のプライドを守りながら受診につなげやすくなります。

受診を嫌がる家族への接し方
本人が受診を嫌がるのは、自然な反応です。
自分では困っていないと思っている場合もあります。
「認知症扱いされた」と感じて、怒ったり落ち込んだりすることもあります。
大切なのは、説得よりも安心です。

使いやすい声かけ
次のような言葉がおすすめです。

・「責めたいわけじゃなくて、心配しているだけだよ」
・「早めに相談すると、できることが増えるみたいだよ」
・「一人で行かなくていいよ。一緒に行こう」
・「もの忘れだけじゃなく、睡眠や血圧も見てもらおう」
・「今の元気な生活を長く続けるために、一度確認してみよう」
反対に、避けたい言い方もあります。
・「認知症なんじゃないの?」
・「また忘れたの?」
・「前にも言ったでしょ」
・「病院に行かないと大変なことになるよ」
不安を強くぶつけると、本人は身を守ろうとして受診を拒みやすくなります。
第三者に頼るのもひとつの方法
家族の言葉には反発しても、かかりつけ医、友人、兄弟姉妹、地域包括支援センターの職員など、第三者の言葉なら受け入れやすいことがあります。
家族だけで抱え込まなくて大丈夫です。
特に、受診拒否が強い場合や、家族関係がこじれそうな場合は、先に家族だけで相談しておくのもよい方法です。

今日からできる認知症予防の生活習慣
MCIや認知機能の低下が気になるときは、特別なことを完璧にする必要はありません。
大切なのは、脳と体に少しずつ刺激を入れることです。
1日10分から歩く
歩くことは、体力づくりだけでなく、脳への血流や気分の安定にも関係します。

まずは1日10分で大丈夫です。
慣れてきたら、週3〜5回を目安にしましょう。
外に出るのが難しい日は、家の中で足踏みをするだけでも始められます。
下半身を使う運動を入れる
立つ、歩く、階段を上る。
こうした動きには、太ももやお尻、ふくらはぎの筋肉が関係します。

おすすめは、椅子を使った立ち座り運動です。
- 椅子に浅く座る
- 足を肩幅に開く
- 手すりや机に軽く手を添える
- ゆっくり立つ
- ゆっくり座る
目安は5〜10回。
週3回ほどから始めましょう。
膝や腰に痛みがある方、ふらつきがある方は無理をせず、医師や専門職に相談してください。
会話と予定を増やす
脳は、人と話すことでよく働きます。
会話では、聞く、考える、思い出す、言葉にする、表情を見るという動きが同時に起こります。
家族ができる工夫は、質問攻めにしないことです。

「今日は何したの?」よりも、
「今日のお昼、何を食べた?」
「この前の散歩道、花が咲いてたね」
のように、答えやすい話題から始めましょう。
睡眠、食事、生活習慣病も見直す
睡眠不足、血圧、血糖、脂質、飲酒量、運動不足は、脳の健康にも関係します。
いきなり全部を変える必要はありません。

・寝る時間を30分だけ整える
・水分をこまめにとる
・野菜やたんぱく質を少し増やす
・お酒を飲む日は量を決める
・血圧を1日1回測る
このような小さな見直しで十分です。
続けるコツは「本人の役割」を奪わないこと
家族が心配になると、つい何でも先回りしてしまいます。
しかし、本人ができることまで奪ってしまうと、自信や意欲が下がることがあります。
大切なのは、できないことを責めるのではなく、できることを続けてもらうことです。
たとえば、買い物メモを書く、洗濯物をたたむ、花に水をあげる、散歩コースを一緒に決める。
小さな役割が、生活の張り合いになります。
「助かったよ」
「一緒にできてよかった」
「またお願いしてもいい?」
このような言葉は、本人の安心感につながります。

まとめ
MCIは、認知症そのものではありません。
しかし、もの忘れや生活の変化に早く気づくことは、これからの暮らしを守る大切な一歩です。
早期受診は、本人を責めるためではありません。
今の生活を長く続けるために、体と脳の状態を確認するためのものです。
受診を嫌がる家族には、強く説得するよりも、心配している気持ちをやさしく伝えましょう。
必要に応じて、かかりつけ医や地域包括支援センターなど、第三者に相談することも大切です。
運動、会話、睡眠、食事、生活習慣の見直しは、今日から少しずつ始められます。
完璧を目指さなくて大丈夫です。
できる日から、できることを。
その積み重ねが、脳と体を守る力になります。

最近、体力の低下やもの忘れが気になる。
親の健康づくりをどう支えたらよいかわからない。
地域や施設で、無理なく続けられる介護予防の取り組みを始めたい。
そのような方へ、Well Aging Support やわらぎでは、運動だけでなく生活習慣も含めて、その人に合った健康づくりを一緒に考えます。
京都市周辺で介護予防や認知症予防に関心のある方は、まだ早いかなと思う段階でもお気軽にご相談ください。


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