親が年を重ねてくると、少しずつ気になってくるのが「実家のこと」「介護費用のこと」「もし認知症になったらどうするか」という問題です。
元気なうちは、家族で話し合うのをつい後回しにしてしまいがちです。
でも、親の判断能力が低下してからでは、実家の売却や財産管理が思うように進まないことがあります。
そこで知っておきたい制度の一つが「家族信託」です。
家族信託は、親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産の管理を任せる仕組みです。信託法では、受託者が信託財産の管理や処分などを行う立場として定められています。
この記事では、家族信託の基本を、難しい言葉をできるだけ使わずに解説します。
家族信託とは、親の財産を家族が管理する仕組み
家族信託を簡単にいうと、
「親の財産を、親のために、信頼できる家族が管理する仕組み」です。
たとえば、80代のお父さんが実家を持っているとします。
元気なうちに、長男へ実家の管理を任せる契約をしておけば、将来お父さんの判断能力が低下した場合でも、契約内容に沿って長男が実家の管理や売却を進められる可能性があります。
売却したお金は、親の介護費用や施設入所費用などに使うことができます。
家族信託に出てくる3つの役割
家族信託では、主に3つの役割があります。
委託者
財産を預ける人です。多くの場合は親です。
受託者
財産を管理する人です。子どもなど、信頼できる家族がなることが多いです。
受益者
財産から利益を受ける人です。多くの場合は親本人です。
つまり、親の財産を子どもが管理し、その利益は親のために使う、という形です。

認知症になると、実家の売却が難しくなることがある
親が認知症になり、判断能力が低下すると、不動産の売買契約を本人だけで進めることが難しくなる場合があります。
家族だからといって、本人の財産を自由に売ったり、貸したりできるわけではありません。
成年後見制度を利用する方法もありますが、本人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。裁判所の案内でも、売却・賃貸借契約・建物の取り壊しなどは「処分」に含まれるとされています。
これは本人を守るための大切な仕組みです。

ただし、家族側から見ると、
「施設費用を早く準備したい」
「空き家の管理が大変」
「買い手が見つかったのに手続きが進まない」
という困りごとにつながることがあります。
だからこそ、元気なうちの準備が大切になります。
家族信託と成年後見制度の違い
家族信託と成年後見制度は、どちらも財産管理に関わる制度です。
ただし、使うタイミングと目的が少し違います。
家族信託
家族信託は、親が判断できるうちに契約します。
「将来こうなったら、実家を売って介護費用に使ってほしい」
「実家はすぐ売らず、しばらく賃貸に出してほしい」
このように、親の希望を契約に反映しやすいのが特徴です。
成年後見制度
成年後見制度は、判断能力が不十分になった後に利用する制度です。
本人を守るために、家庭裁判所が関わります。
そのため、財産の使い道や不動産の処分は、本人の利益を第一に考えて慎重に進められます。
柔軟さよりも、本人保護を重視する制度といえます。
家族信託のメリット
家族信託には、次のようなメリットがあります。
財産が凍結されにくい
親が認知症になった後も、契約内容に沿って受託者が財産管理を続けられます。
実家を売却して介護費用に充てる、空き家を管理する、賃貸に出すなど、家族の状況に合わせた対応がしやすくなります。
親の希望を形にしやすい
元気なうちに話し合うことで、親の意思を反映しやすくなります。
「できるだけ自宅で暮らしたい」
「施設に入るときは実家を売って費用にしてほしい」
「特定の家族に負担が偏らないようにしたい」
こうした思いを、家族で共有するきっかけにもなります。
遺言と組み合わせることもできる
家族信託は、信託した財産について承継先を決められる場合があります。
ただし、信託に入れていない財産まですべてカバーできるわけではありません。
預貯金、自動車、家財などは、遺言書と組み合わせて考えることが大切です。
家族信託の注意点
便利な制度ですが、注意点もあります。
認知症が進んでからでは契約できないことがある
家族信託は契約です。
そのため、親本人に契約内容を理解し、判断する力が必要です。
「最近もの忘れが増えたけど、まだ大丈夫かな」と感じた段階で、早めに専門家へ相談することが大切です。
節税目的の制度ではない
家族信託は、基本的に財産管理のための制度です。

それ自体に大きな節税効果があるわけではありません。
信託の受益者が変わる場合などは、相続税や贈与税の扱いが関係することがあります。国税庁も、信託に関する権利について相続税・贈与税の課税関係を示しています。
税金については、必ず税理士に確認しましょう。
受託者の責任は軽くない
受託者になる家族には、財産をきちんと管理する責任があります。
親のお金と自分のお金を分ける。
記録を残す。
必要に応じて家族へ説明する。
こうした管理が必要になります。
「名前だけ貸す」という感覚ではなく、実際に管理する覚悟が必要です。
家族間トラブルを防ぐ工夫も必要
家族信託は、受託者に大きな権限が集まります。
そのため、兄弟姉妹の間で不信感が生まれることもあります。
「誰が管理するのか」
「どの財産を信託するのか」
「売却するタイミングはどうするのか」
「お金の使い道をどう報告するのか」

このあたりを、最初に丁寧に決めておくことが大切です。
必要に応じて、弁護士や司法書士などの専門家を信託監督人として置く方法もあります。
家族で話し合うときのポイント
いきなり「相続の話をしよう」と切り出すと、親が身構えてしまうことがあります。
おすすめは、生活の話から始めることです。
「これからも安心して暮らすために、家のことを一緒に考えておきたい」
「もし施設に入ることになったら、実家をどうするか決めておくと安心だね」
「お父さん、お母さんの希望を元気なうちに聞いておきたい」
このように、親の財産をどうするかではなく、親の暮らしをどう守るかという言い方にすると、話し合いやすくなります。
まず今日からできること
家族信託は、すぐに契約する必要はありません。
まずは次の3つから始めてみましょう。
1つ目は、親の希望を聞くことです。
自宅で暮らしたいのか、施設も考えているのか、実家を残したいのかを確認します。
2つ目は、財産をざっくり整理することです。
実家、預貯金、保険、借入れなどを一覧にしておくと、相談がしやすくなります。
3つ目は、専門家へ早めに相談することです。
司法書士、弁護士、税理士など、家族信託に詳しい専門家へ確認しましょう。
家族信託は、家族構成や財産内容によって設計が大きく変わります。
インターネットの記事だけで判断せず、必ず個別に相談することが大切です。
まとめ
家族信託は、親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産管理を任せる仕組みです。
認知症になってからでは、実家の売却や財産管理が難しくなることがあります。
家族信託を準備しておくことで、将来の介護費用や空き家管理に対応しやすくなる場合があります。
ただし、節税目的の制度ではありません。
受託者の責任も重く、家族間の話し合いや専門家のサポートが欠かせません。
「まだ早いかな」と思う時期こそ、実は話し合いの始めどきです。
親の暮らしを守るために、まずは家族で少しずつ話してみましょう。
親のもの忘れや体力低下が気になり始めたとき、財産や実家のことだけでなく、日々の生活習慣や介護予防も一緒に考えることが大切です。
Well Aging Support やわらぎでは、京都市周辺で、無理なく続けられる健康づくり・介護予防のサポートを行っています。
「親にどんな運動をすすめたらいいかわからない」
「最近、外出が減ってきて心配」
「家族だけで支えるのが少し不安」
「地域や施設で介護予防の取り組みを始めたい」
そんな段階でも大丈夫です。
まだ早いかなと思う時期から、できることを一緒に考えていきましょう。
まずはお気軽にご相談ください。


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