イギリスの医学専門誌『ランセット』の2024年報告では、認知症のリスク要因として14項目が示され、これらに取り組むことで認知症の一部は予防または発症を遅らせられる可能性があるとされています。特に新たに注目されたのが、高LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールと、治療されていない視力低下です。また、難聴、社会的孤立、運動不足なども大切なポイントとして挙げられています。
認知症予防というと、計算ドリルや脳トレを思い浮かべる方も多いかもしれません。
もちろん、頭を使うことは大切です。
でも実は、脳の健康は「血管」「耳」「人とのつながり」「体を動かす習慣」とも深く関係しています。
今日からできることは、特別なことばかりではありません。
食事を少し見直す。
歩く時間を少し増やす。
聞こえにくさを放っておかない。
人と話す機会をつくる。
こうした小さな積み重ねが、将来の脳と体を守る力になる可能性があります。
認知症予防で注目される「14のリスク」
ランセットの報告では、認知症に関係するとされるリスク要因が年代ごとに整理されています。
若い時期では教育の機会。
中年期では難聴、高LDLコレステロール、うつ、頭のけが、運動不足、喫煙、糖尿病、高血圧、肥満、飲酒など。
高齢期では社会的孤立、大気汚染、視力低下などです。
ここで大切なのは、
「認知症はすべて防げる」
という意味ではないことです。
年齢や体質、病気、遺伝的な要因も関係します。
ただし、生活習慣や環境を整えることで、リスクを下げたり、発症を遅らせたりできる可能性があると考えられています。
つまり、認知症予防は「何歳からでも遅すぎない健康づくり」と言えます。
悪玉コレステロールが脳に関係する理由
悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが高い状態が続くと、血管が硬くなったり、血液の流れが悪くなったりすることがあります。
脳は、血液から酸素や栄養を受け取って働いています。
そのため、血管の健康は脳の健康ともつながっています。
血流が悪くなると、脳に十分な酸素や栄養が届きにくくなる可能性があります。
また、高血圧や糖尿病、喫煙、運動不足などが重なると、血管への負担はさらに大きくなります。
今日からできる見直し
まずは、健診結果を確認しましょう。
LDLコレステロールの数値が高いと言われている方は、自己判断で放置せず、医師に相談することが大切です。
生活の中では、次のような工夫が始めやすいです。
・揚げ物や脂っこい食事を続けすぎない
・野菜、海藻、きのこ、大豆製品を増やす
・魚を食べる回数を少し増やす
・甘い飲み物や間食をとりすぎない
・1日10分でも歩く時間をつくる
完璧な食事に変える必要はありません。
まずは「昨日より少し整える」くらいで大丈夫です。
難聴を放っておかないことも脳の健康につながる
聞こえにくさは、年齢のせいだから仕方ないと思われがちです。
でも、聞こえにくい状態が続くと、人との会話が減りやすくなります。
会話が減ると、外出や交流の機会も少なくなり、脳への刺激が減ってしまいます。
「何度も聞き返すのが申し訳ない」
「会話についていけない」
「集まりに行くのがおっくう」
こうしたことが積み重なると、社会的な孤立につながることもあります。
家族ができる声かけ
聞こえにくそうな家族に対して、いきなり
「補聴器をつけたら?」
と言うと、抵抗を感じる方もいます。
おすすめは、やわらかい声かけです。
「最近テレビの音、大きめになってきたかもね」
「一度、耳の聞こえを確認してみてもいいかも」
「会話を楽しむための道具として相談してみようか」
補聴器は“年寄りっぽいもの”ではなく、生活を楽しむためのサポート道具です。
気になる場合は、耳鼻咽喉科や補聴器相談ができる専門機関に相談してみましょう。
社会的孤立を防ぐことは、立派な認知症予防
人と話すことは、思っている以上に脳を使います。
相手の話を聞く。
言葉を選ぶ。
表情を読む。
昔のことを思い出す。
次の予定を考える。
これらはすべて、脳への良い刺激になります。
高齢になると、退職、家族との別れ、体力低下などで、人との接点が減りやすくなります。
だからこそ、意識して「つながり」を残すことが大切です。
無理なくできる交流のつくり方
・近所の人にあいさつをする
・週1回、家族や友人に電話する
・地域の体操教室に参加する
・買い物ついでに少し会話する
・趣味や散歩の仲間をつくる
たくさん話さなくても大丈夫です。
短い会話でも、脳と心には良い刺激になります。
運動は血管・筋力・気分をまとめて支える
運動は、認知症予防の中でも取り入れやすい方法のひとつです。
体を動かすことで、血流がよくなりやすくなります。
筋力やバランス力の維持にもつながります。
また、外に出て歩くことで、景色を見る、人とすれ違う、季節を感じるなど、脳への刺激も増えます。
世界保健機関の認知機能低下・認知症リスク低減ガイドラインでも、身体活動は認知機能低下リスクを減らすために推奨されています。
目安は「少し息が弾むくらい」
最初から長時間がんばる必要はありません。
まずは、1日10分の散歩から始めてみましょう。
慣れてきたら、週に3〜5回、20〜30分を目安にします。
歩く時は、次のポイントを意識します。
・背すじを軽く伸ばす
・少しだけ歩幅を広げる
・腕を自然に振る
・息が少し弾むくらいの速さにする
・痛みやふらつきがある時は無理をしない
高齢の方や持病がある方は、急に運動量を増やさず、必要に応じて医師に相談してください。
料理も身近な脳トレになる
料理は、実はとてもよい脳の運動です。
献立を考える。
材料を選ぶ。
切る、炒める、味つけする。
時間を見ながら段取りを組む。
これらは、記憶力、判断力、手先の動き、集中力を使います。
「今日は冷蔵庫にあるもので何を作ろうかな」
「脂っこくなりすぎないようにしよう」
「野菜をもう一品足してみよう」
こう考えるだけでも、脳はしっかり働いています。
ただし、火の扱いや包丁が不安な場合は、家族が一緒に見守ることも大切です。
電子レンジ調理やカット野菜を使うなど、安全で続けやすい工夫を取り入れましょう。
まとめ
認知症予防は、特別な脳トレだけではありません。
悪玉コレステロールを放っておかないこと。
聞こえにくさをそのままにしないこと。
人とのつながりを持ち続けること。
無理のない運動を続けること。
食事や睡眠を少し整えること。
こうした毎日の小さな習慣が、脳と体を支える土台になります。
大切なのは、完璧を目指さないことです。
できる日から、できる分だけで大丈夫です。
もの忘れが強くなってきた、生活に支障が出ている、家族から見て心配な変化がある場合は、早めに医療機関や専門機関へ相談しましょう。
そのうえで、日々の健康づくりや介護予防は、暮らしの中で少しずつ整えていくことができます。
最近、体力の低下やもの忘れが気になり始めた方へ。
また、親の健康づくりをどう支えたらよいか迷っているご家族へ。
Well Aging Support やわらぎでは、運動だけでなく、生活習慣や日常の過ごし方も含めて、無理なく続けやすい健康づくりを一緒に考えています。
「まだ相談するほどではないかも」
「何から始めればいいかわからない」
という段階でも大丈夫です。
個人の方、ご家族、施設、地域団体の方も、お気軽にご相談ください。
今の体の状態や生活に合わせて、できることから一緒に整えていきましょう。


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